マウンドから山なりの球が投げられて,打者が儀礼的に空振りする。
おなじみ始球式のシーンです。
野球には古くからの習慣が大切にされる「儀式のスポーツ」という側面がありますが、この始球式、いったいいつから始まったのでしょう。
文献的な資料によれば明治41年(1908年)ではないかと思われます。
この年,アメリカから遠征してきたリーチ・オール・アメリカンと早稲田大学が対戦したときに,総長の大隈重信がマウンドから1球を投じました。
早稲田大学の創設者で政治家でもあった大隈総長は羽織、袴(はかま)にソフト帽という、いかにも明治といういでたちでオーバースローで振りかぶっている写真が残っています。
もっともこの始球式がこのような記録に残されたのは、大隈が著名人であったからに違いありません。
また,当時では珍しい国際試合のためもあったでしょう。それ以前の野球渡来初期の記録は発見できません。
アメリカでもこうした記録はあまり残っておらず、大リーグで大統領が行なう始球式が記録されています。
1910年4月14日のセネタース対アスレチックス戦でウィリアム・タフト大統領が投げたのが第1号です。
ただし、アメリカの始球式は観客席の最前列から近くにいる捕手にボールを軽くトスするのが一般的でした。
ところが、最近は日本のようにマウンドから投げるのが多くなっている。
案外、日本スタイルがお手本になっているのかも知れません。